1970年公開の「マッシュ」は、ロバート・アルトマン出世作にして代表作の戦争コメディ。20年前に一度観た時はイマイチ理解できなかったのですが、久し振りに観たら、やはり良く出来ている事が分かりました(何を今更)。アルトマンの後の作品に顕著な群像劇的方向性が、ここで早くも発揮されています。戦闘シーンはひとつもないままでその不条理をえぐり出しているという点で、かなり風変わりな戦争映画。(MASHとは、Mobile Army Surgical Hospitalの頭文字とのこと。)
朝鮮戦争下、前線近くの野戦病院で負傷兵の治療に当たる三人の外科医のハレンチ振り、ハチャメチャ振りを描いた本作。戦争の狂気に直面し、精神の均衡を保つ為に無軌道な行動を取らざるをえない軍医達を描く事で、まさに無軌道そのものであるところの戦争を間接的に揶揄しているという事でしょうか。ホンモノの外科医をスーパーバイザーに迎えて作られた、リアリズムに溢れた手術シーン(気が弱い私は正視できない)と、主人公達の軽薄な描写の対比が効果的です。
女性将校ホットリップス役のサリー・ケラーマンが抜群でした。これが出世作になったドナルド・サザーランド、エリオット・グールド、トム・スケリットの主演三人も、とにかく軽妙。一昔前、キーファー・サザーランドには「名優ドナルドの息子」という枕詞が付いたものですが、いまや倅の方が有名になってしまいましたね。エリオット・グールドは近年では「オーシャンズ11」シリーズで見掛けましたし、トム・スケリットと言えば「エイリアン」ノストロモ号の船長や、「コンタクト」でジョディ・フォスターの手柄を横取りするイヤな上司を思い出す。
「マッシュ」、時代を代表する名作としてその名がアメリカ映画史に刻まれているのみならず、興行的にも大成功したそうです。朝鮮戦争を舞台にしてはいるものの、それを劇中で明確にすることを極力避けて戦争全般に対する風刺色を匂わせた事で、当時ベトナム戦争にリアルタイムで辟易していたアメリカ人の心境とシンクロしたのではないか。そんな事をアルトマンは語っておりました。

上のDVDパッケージよりも、↓公開当時のポスターの方が好きです。
