1980年冬の水曜ロードショーで放映されたアニセー・アルビナのミニ・インタビューが、動画サイトにアップされていました。
アニセー・アルビナと言っても、今やご存知ない方がほとんどかもしれません。アニセーは1971年の青春映画「フレンズ」に出演し、70年代日本の青少年の間で人気を博したフランスの女優。(テレビドラマの「フレンズ」とは無関係。)このインタビューは、「続・フレンズ」放映日に併せて流されたもので、すっかり忘れていましたが、実際に私もこの映像を見ていた事を思い出しました。若き晴郎氏の姿も含めてあまりにも懐かしく、昭和風な言い回しを用いれば涙がチョチョ切れそうです。
インタビューでは次回作(ナイトウェイ??)の予定を語っているアニセーですが、情報元「ライプツィヒの夏」の記事によると、結局このプロジェクトは実現しなかったとのこと。のみならず、彼女の映画界でのキャリアはこの後は徐々に後退し、結局はシーンからフェイドアウトしてしまいます。そういった経緯を知っている今、当時の彼女の熱意を伴った姿を見ると、なんとも切ないものがあります。アニセー・アルビナは、2006年に53歳で亡くなっています。
情報元:ライプツィヒの夏
少し前の映画ですが、「パイレーツ・オブ・カリビアン 呪われた海賊たち」。海賊映画は当たらないという、これまでのジンクスを覆した一本だそうです。
この作品、劇場で予告編を見たのですが、ゾンビの様な骸骨男がゾロゾロ出て来るシーンに、「またこの手のファンタジー冒険映画か…」と誤解が生じ、全く食指が動かず。(ファンタジー系は、出来の良し悪しに関わらずどうも苦手なもので…。)そのまま月日は経ち、最近やっと鑑賞するに至るまで随分と時間がかかりましたが、思っていた以上によく出来ていてえらく面白かったです。予告で誤解したとは言え、もっと早く見れば良かった。恐らく17世紀頃が舞台と思われる海賊活劇映画。悪い海賊(海賊は悪いものと相場が決まっていますが)の手に落ちたヒロインを救出するという、私レヴェルの脳味噌にも理解しやすい単純明快ストーリーがなかなか結構。
一にも二にも、ジョニー・デップ演じる海賊ジャック・スパロウのキャラクターが秀逸です。一種のアンチ・ヒーローと言ったらいいのか、自己の保身だけが唯一の行動原理、決して正義の為になにかをする訳ではない一匹狼。クネクネ体をくねらせながら喋り、極度にいい加減な性格の持ち主。このテキトー男に加え、血気盛んな鍛冶屋の若者(オーランド・ブルーム)、良家の娘で勝ち気なヒロイン(キーラ・ナイトレイ)とで形成されたトライアングルは、スター・ウォーズで見られた三人の登場人物像(己の利益の為に主人公に同行する宇宙海賊=ハン・ソロ、若く未熟な主人公=ルーク・スカイウォーカー、男勝りの姫=レイア)を連想させます。
更に言えば、海賊の手下の凸凹コンビ(歯抜けの太っちょと義眼のヤセ)の滑稽なコメディ・リリーフぶりも、スター・ウォーズのドロイド・コンビ(元をたどれば、黒澤「隠し砦の三悪人」の農民コンビ)へのオマージュか。更に、英国海軍内にも同様の役割の水兵コンビを登場させる徹底ぶり。そもそも主演ジョニー・デップの存在そのものが既にコミカルな訳で。こういうユーモラスなキャラクター達を多く配置する事で、ある意味グロテスクな幽霊海賊描写と対比しての滑稽さを強調し、バランスを取ろうとしているのか。
満月の夜に骸骨に変わる、という呪いを受けた海賊達の姿を筆頭に、CGが大活躍の映画であり、確かにそこも一つの見所。押し寄せる骸骨の群れと主人公達が剣を交えるシーンなど、往年のハリーハウゼン映画(人形アニメと人物の合成映像)の名場面を彷彿とさせます。一方で、生身の人間同士の殺陣もなかなか凝っていて、ジョニー・デップとオーランドのチャンバラは映画の中でも最も印象的な場面のひとつでした。単にCG頼みの作りではない、肉弾的魅力も兼ね備えているところに大きな見応えがあります。
ちなみに、好評につき製作されたと思われる続編、続々編は、極端なまでに話がとっ散らかり、ピントがボケまくっている冗長作品(あくまで個人的見解)なので、一作目に気を良くして続きをご覧になる際は、その点十分、十分にご留意を。一本目があんまり面白かったので、続編を借りにすぐさまツタヤに走ったのですが、一作目とのあまりの落差に腰が抜けそうになりました…。オレの時間を返せと海に向かって叫びたくなったのは、本当に久し振りです。(正確には1979年以来。)
これは強烈なオリジナリティを発揮しつつ老若男女の共感を誘うことの出来る、高クオリティ映画だと思いました。前の席に小さな子供連れの家族が座っていましたが、子供は画面に釘付けの様でした。そういう私も釘付け。
一にも二にも、水の表現が素晴らしい。海を舞台にした映画ということで、特に「波」の描写が。荒れ狂う海の姿を、今までに見た事もない様な、恐ろしくもユーモラスなデフォルメの仕方で見せてくれます。冒頭の幻想的な海底光景も印象的ですし、有名な主題歌ばかりに目が行きがちですが劇中音楽も良かった。あと、海の中を幾何学的(?)に描いたタイトルバック映像も好きです。
ベースとなっている物語が「人魚姫」だそうで、魚が人間になりたがる話。理詰めで考えて筋の通るようなストーリーでは当然ありませんが、生き生きとした場面が最初から最後まで続き、とにかく引き込まれます。子供の頃に観たら、さぞや深く心に刻まれる事だろうと思いますし、もちろん大人が見ても十分に楽しめる。人によって多少の好き嫌いはあるのかもしれませんが、「なんだかよく分からないがスゴイ!」と思わせるそのパワーに関しては、恐らく誰もが納得するのではないでしょうか。
ところで、矢野顕子が声優で出演しているということを事前に聞いていたのですが、見終わってもどこに出ていたのかサッパリ分からず。帰って調べてみたら、ちょっと微笑ましい配役だったので笑ってしまいました。彼女の声の個性を知っている人間なら簡単に思いつきそうなキャスティングではありますが、よくまあそれを実行に移したものだ。
今更ですが、パイレーツ・オブ・カリビアン全三作をぶっ通しで観ました(疲)
たった三作と言えばたった三作なのですけれども、一本当たり約二時間半と長尺な作品で、「猿の惑星」シリーズ全5作をたて続けに観るのに相当すると思われる満腹感がありました。一作目はなかなか面白かったのですが、二作目、三作目と回を重ねるに連れてストーリーがグダグダになっていき、特に三作目はかなりトホホな仕上がりでした。(お好きな方、申し訳ございません。)
一作目は、囚われのヒロインを救うというシンプルな物語が基底にあって非常に分かり易いのですが、二作目と三作目では、主要登場人物達がそれぞれに自分の都合を抱えて対立しあいながら行動するようになる。結果、いったい誰に感情移入して観たら良いかサッパリ分からず困り果てました。ヒロインを助けに行ったはずの主人公が結局ヒロインと反目しあったりもして、もう展開メチャクチャ(笑)。
映像的には、オオダコが船を襲うシーン(二作目)は大迫力、モノ凄い出来映えでした。これは観る価値アリかと思います。映画としては可もなく不可もなしのシンドバッド・シリーズが、ハリーハウゼンのストップモーション・アニメの付加価値で傑作扱いになるのに似た風情があります。
取りあえず、一作目に関しては普通に良く出来ていると思うので、未見の方は是非ご覧下さい。殺陣が凝っていて見応えあります。
「少林サッカー」のチャウ・シンチー新作、「ミラクル7号」観ました。どんなおバカ映画かと思って見たら意外や意外、泣ける感動作品でした。相変わらずの漫画的作風ではありますが、荒唐無稽な描写も含めて、よく出来ていると思います。
宇宙人(?)と少年の交流を軸に貧乏父子の日常を描くこの作品。なんといっても、宇宙生命体のミラクル7号が表情豊かでカワイイ。和みます。地球外生命と地球人のコンタクトというテーマは、既に様々な形で映画化されている訳ですが、こういう縫いぐるみ的な風体のエイリアンはスピルバーグでも思いつかなかった…。ラストシーンも笑えて泣ける感じで、大変結構でした。
主人公の少年を演じているのは、実は女の子だそうです。
1970年公開の「マッシュ」は、ロバート・アルトマン出世作にして代表作の戦争コメディ。20年前に一度観た時はイマイチ理解できなかったのですが、久し振りに観たら、やはり良く出来ている事が分かりました(何を今更)。アルトマンの後の作品に顕著な群像劇的方向性が、ここで早くも発揮されています。戦闘シーンはひとつもないままでその不条理をえぐり出しているという点で、かなり風変わりな戦争映画。(MASHとは、Mobile Army Surgical Hospitalの頭文字とのこと。)
朝鮮戦争下、前線近くの野戦病院で負傷兵の治療に当たる三人の外科医のハレンチ振り、ハチャメチャ振りを描いた本作。戦争の狂気に直面し、精神の均衡を保つ為に無軌道な行動を取らざるをえない軍医達を描く事で、まさに無軌道そのものであるところの戦争を間接的に揶揄しているという事でしょうか。ホンモノの外科医をスーパーバイザーに迎えて作られた、リアリズムに溢れた手術シーン(気が弱い私は正視できない)と、主人公達の軽薄な描写の対比が効果的です。
女性将校ホットリップス役のサリー・ケラーマンが抜群でした。これが出世作になったドナルド・サザーランド、エリオット・グールド、トム・スケリットの主演三人も、とにかく軽妙。一昔前、キーファー・サザーランドには「名優ドナルドの息子」という枕詞が付いたものですが、いまや倅の方が有名になってしまいましたね。エリオット・グールドは近年では「オーシャンズ11」シリーズで見掛けましたし、トム・スケリットと言えば「エイリアン」ノストロモ号の船長や、「コンタクト」でジョディ・フォスターの手柄を横取りするイヤな上司を思い出す。
「マッシュ」、時代を代表する名作としてその名がアメリカ映画史に刻まれているのみならず、興行的にも大成功したそうです。朝鮮戦争を舞台にしてはいるものの、それを劇中で明確にすることを極力避けて戦争全般に対する風刺色を匂わせた事で、当時ベトナム戦争にリアルタイムで辟易していたアメリカ人の心境とシンクロしたのではないか。そんな事をアルトマンは語っておりました。
上のDVDパッケージよりも、↓公開当時のポスターの方が好きです。
「少林サッカー」のチャウ・シンチー最新作、「ミラクル7号」。劇場で流れた予告編を観た時点で妙に魅かれる何かを感じたのですが、新聞の映画評を見ていたらなんと五つ星★★★★★でした。他の社会派映画や話題作が軒並み二ツ星、三ツ星の評価に甘んじる中で。一見すると子供騙し映画にも見えますが、ただの色物ではなさそうです。
言うまでもないですが、評論家の意見を基準に観る映画を選んでいる訳ではありません。が、今回はぜひ観に行かなければ、という思いが益々強化されました。
亡き水野晴郎氏がかつて解説を務めていた水曜ロードショーでは、最も感受性の鋭敏だった頃に数々の名画を堪能させてもらいました。中でも記憶に残っているのが、20世紀を代表する名作「ゴッドファーザー」。最近は、大作を放送する際は時間枠を延長して流す場合が多い様ですが、昔は前編・後編と二週に分けて放映されていて、「ゴッド〜」もそんな扱いの一本でした。
流血の抗争から家族の団欒まで、全ての場面がいちいち美しく絵画的な一本ですが、個人的に一番インパクトあったのは、オープニングの結婚式シーン。いかにもイタリア人の集まりといった風情の陽気さ、楽しさはとても作り物とは思えず、そのスケールの大きさといいリアリティといい、あまりの出来の良さにつくづく感動させられました。また、賑やかな式の舞台裏ではゴッドファーザーを囲んで策謀が巡らされている、という映画的コントラストも見事。
1989年頃のケビン・コスナー主演映画「フィールド・オブ・ドリームス」(これも名作)には、現代に生きる主人公が70年代に迷いこんでしまう場面があります。それを示す材料として、ニクソンの選挙戦ポスターと並んで登場するのが、「ゴッドファーザー封切り!」という看板。アメリカ人にとって、「ゴッドファーザー」は時代を象徴する記号にさえなっている様です。日本人が60年代にタイムスリップしたなら、裕次郎が出て来るところでしょうか。
これは抜群に面白かった!です。三谷幸喜監督作品は確か4本あったと思いますが、その中でベストというだけでなく、近年観た色々な映画の中でも屈指の面白さ。劇場に笑いが溢れるという楽しさ、久々に味わって参りました。あまりにも面白かったので、映画の日にでも再度観にいく予定。
マジックアワー、というからには手品師の映画かと思えばさにあらず。そうか、実は映画に関する映画だったのか!「和製アメリカの夜」か「和製ニューシネマ・パラダイス」、「和製8 1/2」のコメディ仕立てといったところかな、と勝手に期待してみたらそうでもない。という訳で、ほとんど予備知識のないままに鑑賞できたのがまた良かったので、ここでは設定やあらすじ等に一切触れないことにします。(テレビで散々プロモーションしているので、大抵の方はご存知でしょうけれど。)
妻夫木演じる調子のいい若者、深津絵里のハスッパな女、佐藤浩市の愚直なまでの人の良さ、etc...。その他、主要人物から脇まで、出演陣が一人残らずハマっていて実に素晴らしい。コイツさえいなければ…、というのは一人もいませんでした。当然かもですが、脚本も抜群。お互いがお互いの立場を誤解したまま(あるいは騙されたまま)、それでも微妙に会話が噛み合って、逆に相互理解が深まって行く様子は抱腹絶倒、必見です。
美術も良く出来ていて、この方面詳しくないので間違っていたらすみませんが、昭和初期的(あるいは大正的?)なモダニズムというか、禁酒法時代のアメリカ的というか、そんなクラシックな赴きの世界観が物語に見事にマッチ。(ただし、時代設定はあくまで現代のようです。)
という訳で美点を挙げだしたらキリがないですが、この映画の成功の最大の功労者、やはり佐藤浩市かと思います。一見して強面なのに、実は真面目で不器用でひたむきな男、しかし、その割には無能、というなかなか懐が深い重層的な役どころは、恐らくご本人にとってもやりがいのある仕事だったのではないでしょうか。彼の役者としての魅力が満載の一本。是非とも公開中に「映画館」でご覧になるところをお勧めします。(それも、なるべく人の多く集まりそうな場所で。)
先日亡くなったマイク水野(水野晴郎)が、人気解説者から映画監督(!)に転身して放った希代の珍作、「シベリア超特急」。もちろん主演もご本人。これほどまでに映画への愛が充満している駄作は今まで観た事がありませんし、これから目にする事も恐らくないでしょう。ヒッチコックの「バルカン超特急」やクリスティ原作「オリエント急行殺人事件」などの列車サスペンスや、その他数々の歴史的名作のエッセンスを抽出して天日に晒し、わざわざひからびさせたモノを随所にちりばめたような怪作。その破壊力は抜群で、どんな名作、傑作よりも強く心に残るところがオソロしい。
本気で作ってこれはない、実は狙っているんじゃないか?と疑う程の「あり得なさ」連発、突っ込みどころ満載の内容に仕上がった本作。真っ当な評価は全く得られなかった代わりに、一部の好事家(みうらじゅん等)からカルト作品としての認定と高い評価を獲得。そのニーズに従って続々と続編が作られたという、まさに記念すべき一本。こういうのって、映画としては成功した内に入るのでしょうか??? いずれにしても見事その波に乗り、自分のやりたいことをやり切ったと思われる晴郎監督の人生、満ち足りたものであったに違いないと私は信じております。
カルト映画としての高評価ぶりはアマゾンのカスタマー・レビューに詳しいので、リンク先でお読み下さい。あそこにはあの映画の名場面が、ここにはあの映画が、といった具合に幾多の名画の
パロディ オマージュが挿入されており、映画好きな方ほど楽しめるかもしれません。いずれにせよ、話のネタに一度は観ておくべき作品。